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​透聴力のために

— 養老天命反転地

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 荒川修作とマドリン・ギンズの建てた建築群である「養老天命反転地」は、CGの世界がそのまま現実空間に出現したようなダイナミックな景観が広がっている。養老天命反転地のパンフレットにはパビリオンを体験する際の「使用法」が書かれており、体験者は自身の身体性を持ってパフォーマンスを行う空間がそこには広がっている。この「使用法」は作者からのある一部分の提案に過ぎず、体験者自身の行動や方法によって改変可能なものとなっている。体験者が養老天命反転地をどのような空間として捉え、どのように振舞うか、どのように読み替えていくことができるのか、再解釈の余地が残されている。視覚的・触覚的に歪な空間ともいえる養老天命反転地で聴覚的な事象を頼りに歩き回る「サウンドウォーク」を行うことで、新しい「使用法」を提案する。聴覚的な行動からこれまで考えられていなかったような動線や隠れたスポットを探す手がかりとする。

[指示書]

サウンドウォークとは、環境音に耳を澄まし、その環境と自身の身体との接点を探索する行為です。環境は様々な音で満たされており、人間の喋り声や虫の鳴き声、木のせせらぎ、足音、呼吸も環境と身体の相互作用によって創発される音です。カナダの作曲家のマリー・シェーファーは著書『A Sound Education』の中で、環境音に対して研ぎ澄まされた聴取能力のことを「透聴力(clairaudience)」と定義しました。「透聴力」の原義は「天使の声を聴く」であり、彼は環境音に積極的に耳を傾け、人間の耳が研ぎ澄まされた状態になることを求めました。目を閉じてその場にじっと立ち止まり音を聴いてみたり、あえて動き回り音を出してみる− 揺らす・叩く・声を出す − ことは、環境音に耳を研ぎ澄ます手がかりとなります。 以下の指示書に従い、養老天命反転地でサウンドウォークを行ってみましょう。

00:00 - 10:00 何も発さず、目を瞑り、静かに周りの音を聴く/ 瞑想を行う

10:00 - 40:00 身体から発する音(足音や呼吸)、物体と触れる音(叩く、揺らす)を感じ、養老天命反転地を大胆に歩き回る - 音の境界を意識し、周りの音を聴く

40:00 - 50:00 何も発さず、目を瞑り、静かに周りの音を聴く / 天使の声に耳を澄ます

Credit

Direction, Engineering: Makoto Amano

Engineering, Recording: Yuki Isogawa, Keizou Tanji, Ikuya Tokumo

Engineering: Yasuko Imura, Shigeru Matsui

Recording: Kazuki Abe

Event

ヨーロー エンタ・ピクニック

2020.10.24 11:00 - 13:00(Term1: 11:00 - 12:00, Term2: 12:00 - 13:00)

at 養老公園

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